『論語』とは、孔子の門人たちが書き付けていた孔子の言葉や問答を、彼の死後取りまとめて編集したものである。全体で約500章程度あり、美しい言葉と知恵の宝庫ともいわれる。日本人は昔から、素読と言って、先生が声高らかに読まれる通りに子供たちが声に出して読む、ということをしてきた。その子供たちのように繰り返し読むことで、その言葉の素晴らしさを感じ、自然に身につけていただけると幸いだ。
【原文】
子曰、由、誨女知之乎。知之爲知之、不知爲不知。是知也。 為政第二 17
【読み】
子 曰く、由、 女に 之を 知ることを 誨えんか。 之を 知るを 之を 知ると 為し、 知らざるを 知らずと 為す。 是れ 知るなり。
【解釈】
孔子先生がおっしゃった。
「子路よ、お前に知るということについて教える。わかっているということはわかっている、わかっていないことはわかっていないと、はっきりすること、その境界線が明確になっていることが知るということなのだ。」
知ると一言でいっても、どのようなことなのだろうか。本当に知っているというのは、自分が知っていることと知らないことを明確に区分している状態である。知っていることは生活の中で生かしていけば良いし、知らないことはこれから学んでいけば良い。
しかし、人間というのは自信過剰になったり、逆に卑屈になってしまったりとその境界線に立つことが非常に難しい。だから、自信がたっぷりの人は知らない部分を見ようとしないし、卑屈になってしまっている人は知っている部分を見ようとしないという状態に陥りやすいのである。
また、このことは、自分の強み・弱みを明確にするということでもある。強みを伸ばして弱みを克服することにより、人は自分の才能を伸ばしたり、短所によって強みを生かしたりしていくことが可能になるのである。
【ワンポイント・アドバイス】
企業内における目標管理でもこの考え方は重要である。ドラッカーもできていることと、できていないことを明確にし、自分が現在立っている場所を明確にすることが成長にとって必要であるといっている。そのために、上司となる人は、部下の自己評価を聴くことはもちろん、普段から良く観察し、フィードバックや情報を提供すると良い。そうすれば、部下は自ら自分の行動を改善し、組織の目的や目標に向かっていくであろう。