『論語』(ろんご)とは、孔子と彼の弟子達の会話を孔子の死後、本人ではなく門人たちが書き付けていた孔子の言葉や問答を、孔子の死後に取り集めて編集したものです。
『論語』には孔子と弟子たちのやり取りを通じて、人として正しい生き方が描かれています。人として正しいことというのは生きる上での原理原則であり、これに沿って生きることが、この世の中をよりよく生きるための最も近道であると考えられます。この考え方は経営をする中でも生かす事ができるものですが、どのように活用していくとよいのでしょうか。
【原文】
子曰、富與貴、是人之所欲也。不以其道得之、不處也。貧與賤、是人之所惡也。不以其道得之、不去也。君子去仁、惡乎成名。君子無終食之間違仁。造次必於是、巓沛必於是。
里仁第四 5
【読み】
子 曰く、 富と 貴きとは、 是れ 人の 欲する 所なり。 其の 道を 以てせざれば、 之を 得とも 処らざるなり。 貧と 賤とは、 是れ 人の 悪む 所なり。 其の 道を 以てせざれば、 之を 得とも 去らざるなり。 君子は 仁を 去りて、 悪くにか 名を 成さん。 君子は 終食の 間も 仁に 違うこと 無し。 造次にも 必ず 是に 於てし、 顚沛にも 必ず 是に 於てす。
【解釈】
孔子先生がおっしゃった。
「財産と高い地位というのは誰もが欲しがるものだが、もしも正しい生き方をせずに得たものであるならば、いつまでもその財産や地位にしがみついたりはしない。逆に、貧しさや低い身分というのは誰もが嫌がるものだが、これも正しい生き方をせずに陥ったのであれば当然の結果であるので、私はそれを受け入れるだろう。私達が理想とすべき立派な人格者というのは、正しい人間の生き方(高い人間性)を重んじるのであるから、私達も正しい生き方をするべきだ。そうでなくては名誉が保てない。立派な人格者というのは、食事をしている最中にも、あわただしい時にも、倒れそうな時でも、正しい生き方というものを忘れないものなんだよ。」
【ワンポイント・アドバイス】
経営者という立場になれば、財産や名誉を得ることに固執してしまったり、貧乏や低い身分に陥ったりしたくないと願っているだろう。しかし、最も大切なことは、財産でも名誉でもなく、正しい人間としての生き方なのである。それは他者へのやさしい気持ちであり、愛情であり、つまり仁であると言えよう。どのようにしたら、仁を高める事ができるだろうか。そして、それを経営に生かすにはどうしたらよいのだろうか。
仁を活かした経営をするには、私は経営理念や経営ビジョンを作ることが大切だと思う。自分の従業員や顧客、社会に対する優しい気持ちを知り、自分の人生や企業の経営戦略と重ね合わせて言葉にし、それを紙に書き伝えるということである。
従業員が言うことを聴かない、気持ちが通じ合わないという声を良く聴く。その声の原因は、従業員が大切にされているという実感がないことにあると私は考えている。顧客満足の前にあるのは、まず従業員満足であり、そして、経営者が従業員や顧客との約束を守るということである。そして、経営者と従業員の想いや考え方が一体となって初めて、経営者の理想は実現できるのではないだろうか。このような理念型経営を実現したいと思われている方がいらっしゃいましたら、ぜひお声かけくださいませ。