『論語』とは、孔子本人が書いたのではなく、孔子の死後、彼の弟子たちが書き付けていた言葉や問答を取りまとめたものです。
経営者の方と話をしていると、従業員の能力の話になる。結論からすると、従業員は素頭の良い、素直で頭の良い人を採用しなければならないということになる。会社の方針や指示に対して否定的な考えの人は成長が遅いし、もっと言うと、組織に悪い影響を及ぼすなど、不利益をこうむることも多々あるのは事実である。しかし、本当に能力が低くて、使えない人はいるのだろうか。また、どのように教育するべきであろうか。そのヒントとなる論語の一節を読んでみる。
【原文】
子曰、質、勝文則野。文、勝質則史。文質彬彬、然後君子。 雍也第六 16
【読み】
子曰く、質、文に勝てば則ち野、文、質に勝てば則ち史なり。文質彬彬として、然る後に君子なり。
【解釈】
孔子先生がおっしゃった。
「生まれたままの飾りけのない素朴さが、学習や修養によって美しく飾りたてた姿よりも勝っていれば、その人は、粗野な人ということになる。外見ばかりが立派で、それが実質よりも勝っていれば、その人は文章の表面ばかりを飾りたがる、文書係の役人のように装飾過剰になってしまう。その文の外見と実質との両者が見事にそろってこそ、そこではじめて君子なのだ。」
【ワンポイント・アドバイス】
人は皆、生まれた時には、優しいきれいな心を持っているものだろう。しかし、そのままでは立派な大人にはなれない。成長の過程の中で、ひねくれてしまったり、前向きな価値観が育まれなかったりすることもあるだろう。その結果、企業に入った時に能力が無いであるとか、教えることが難しいと思われてしまうのである。
企業再生で知られる日本電産の永守重信氏の講話の中にもこんな言葉があった。「人間の能力なんて、2倍も3倍もかわりゃせんのや。意識を変えることが大切なんや。それが経営者の仕事なんや。」ということだった。意識を変えることで、学んだり、鍛えたりして、いろいろな力を備えることが必要なのである。生まれたままの素直な心と、それを磨くこと、この両方がそろっている人は組織で力をつけ、その力をいかんなく発揮できるのである。
自社の経営フィロソフィーを明確にし、部下の意識を変えたいという方、ぜひ一緒に取り組みましょう。