『論語』とは、孔子本人が書いたのではなく、孔子の死後、彼の弟子たちが書き付けていた言葉や問答を取り集めて編集したものです。
多くの経営者が、ビジネスをより良くしたいと考え、様々な行動と学習を繰り返しますが、その中から成功する人と成功しない人が出てきます。特に、従業員との関係がビジネスの成功に密接な関係がありますが、「言うことを聞かない社員」や「仕事に真摯に取り組まない社員」などがいると組織の変革が難しくなります。彼らとは、本当に分かり合えないのでしょうか。育った環境や世代が違うとそのたびに対策を立てなければならないのでしょうか。
【原文】
子張問。十世可知也。子曰。殷因於夏禮。所損益可知也。周因於殷禮。所損益可知也。其或繼周者。雖百世可知也。
為政第二 23
【読み】
子張 問う、 十世 知る 可きや。 子 曰く、 殷は 夏の 礼に 因る。 損益する 所 知る 可きなり。 周は 殷の 礼に 因る。 損益する 所 知る 可きなり。 其れ 或いは 周に 継ぐ 者は、 百世と 雖も 知る 可きなり。
【解釈】
子張が質問した。
「今から十世代も先の制度のことが果してわかるものでございましょうか」孔子先生が答えておっしゃった。「殷の時代は夏の時代の制度を踏襲して、いくらか改良したところもあるが、根本は変っていない。周の時代は殷の時代の制度を踏襲して、足したり引いたりと改良したところがあるが、やはり枝葉末節の変化はあっても、根本は変っていない。今後、周について新しい時代がくるかも知れないが、制度の根本は変らないだろう。真理というものは、このように過去・現在・未来を通ずるものだ。従って十代はおろか百代の後も予見できるのだ」
【ワンポイント・アドバイス】
礼には、礼儀礼節や礼儀作法の他に、制度や法制といった意味がありますが、ここでは制度と解釈しています。生きもの、つまり、人間は、太陽の光と空気と水がなければ、一瞬たりとも生きて行くことはできません。この地球上に住んでいる限り、時代が変わろうとも人間の欲求を満たそうとする営みそのものは基本的に変わるものではありません。
更に、自然の営みの上に立って人間の営みがあるのであって、人間の営みの上に立って自然の営みがあるのではありません。一代30年として考えると、百代といえば約3000年になりますが、人間の精神構造は3000年前も今も大きな変化はないのではないでしょうか。人が人と一緒に生きて行く上で統制を図るための根幹を為す制度は、簡単に変えられるものではありません。枝葉末節の変化はあっても、根幹は変わるものではないという孔子の見解は正しいと思います。
だからこそ人間そのものを深く理解し、過去の知見を活かす理念型経営を導入してみませんか。そして成功と失敗が繰り返される歴史の中から成功の法則を学び、自信を持って経営を行っていきましょう。