『論語』とは、孔子と彼の弟子達の会話を、孔子の死後、本人ではなく門人たちが書き付けていた言葉や問答を、死後に取り集めて編集したものである。
企業の経営をしていると、従業員の仕事や学習に対する意欲の低さを目の当たりにした時に、あきらめを強く感じることがある。もちろん、何とかやる気にしようと考え、懸命に関わってみるのは非常に前向きですが、何とかして教え込もうとすると、徒労に終わってしまうことも多々あるのではないだろうか。それでは、やる気のない従業員にどのように対応したら良いのだろうか。
【原文】
子曰、不憤不啓。不悱不発。挙一隅、不以三隅反、則不復也。 述而第七 8
【読み】
子 曰(いわ)く、 憤せざれば 啓せず。 悱せざれば 発せず。 一隅を 挙げて、 三隅を 以て 反さざれば、 則ち 復せざるなり。
【解釈】
孔子先生がおっしゃった。
「問題が解決されないことで不満の状態にまで達していなければ、指導はしない。(心ではわかっていながら)言葉でうまく表現できないというもどかしい気持ちにまで達していなければ、はっきりと教えることはしない。(部屋には通常四つの隅があるが、その)一つの隅を取り上げて示すと、(それに答えて、そのほかの)三つの隅すべてについて説明できるほど知っている状態でなければ、繰り返して教えることはしない。」
つまり、学ぶことには、「知りたくて、知りたくて仕方がない」、「何としてでも教えてほしい」という、心の底から湧き出してくる強い意欲が必要なのである。このように誰にも負けないやる気さえあれば、たった一つのヒントであっても色々なことを自分で学び考えられるようになるのである。
【ワンポイント・アドバイス】
孔子ほどの指導者であっても、学ぶ姿勢が出来上がっていない人を教えることは難しいのである。それでは、私たちの経営者、あるいは管理職はどうしたら良いのだろうか。
まず、事業の目的・目標を明確にし、その中でのその人の役割を明確に提示することがスタートである。その役割の遂行に必要な能力、行動、仕事に対する認識を明確にして伝え、期待をするということである。そして、マネジメントするのである。マネジメントとは個人の目標を達成するための個別の関わりと言える。やる気になる時、つまり動機づけの要因は人により異なるのだから、一人ずつ教育計画を立て、丁寧に取り組むしかないのである。
もし、そこまで伝えて、従業員に能力開発に対する意欲が生まれないのであれば、リーダーとしての自分の姿を見直し、身を改める必要があるのではないかと思う。それは、経営理念を定め、それを実現していくための事業に対する考え方(経営フィロソフィー)を明確に表現することで、従業員に対して正しい生き方や働き方を、愛と厳しさをもって教えていくことが必要であろう。
このような自分の想いを形に変えて伝えていきたいという方、是非ご相談ください。