『論語』とは、孔子本人が書いたのではなく、孔子の死後、彼の弟子たちが書き付けていた言葉や問答を取りまとめたものです。
経営をしていると、「少しでも早く売上が欲しい」「高い評判を得たい」というように、早い結果を求めることが多々あります。決してそれが悪いわけではありませんが、実力不足に陥ることがありますし、あまり慎重になりすぎると、行動が起こらないということもあります。どうしたら良いのでしょうか。
【原文】
闕黨童子將命。或問之曰、益者與。子曰、吾見其居於位也。見其與先生並行也。非求益者也。欲速成者也。
憲問第十四 47
【読み】
闕党の 童子、 命を 将う。 或るひと 之を 問いて 曰く、 益する 者か。 子 曰く、 吾 其の 位に 居るを 見る。 其の 先生と 並び 行くを 見る。 益を 求むる 者に 非ざるなり。 速やかに 成らんと 欲する 者なり。
【解釈】
闕という村の出身の少年が孔家を訪れる客の取次役をしていた。ある人がこれを見て、「あの少年もよほど学問が上達したと見えますね」と孔子に尋ねた。孔子は答えた。「いやそうではありません。私はあの少年が、大人が座る席に座ってみたり、先輩たちと肩を並べて歩いたりするのを見ました。あの少年は学問や人格の上達を求めているのではなく、自分の名を一日でも早く高めたいと願っているのだろう。」
【ワンポイント・アドバイス】
孔子は、少年の言動を見て「他人の役に立つために学問を学んでいるのではなく、一日でも早く立身出世したがっている」ということを見抜いたのです。
物事を早く成しとげることを「速成」と言います。速成するためには、自分の実力を越えるほどの評判や名声が得られなければなりません。近年のマーケティングの手法の中でも、専門家や先人達からの推奨を得ることは非常に重要とされています。お客様の声を書いてもらうということも同様でしょう。しかし、経営に本来重要なことは地位でも名声でもなく、社会や顧客の満足であり、そのために必要な思想、戦略、技術、ノウハウ、スキルなどを持つということではないでしょうか。
また、速成を望むならば、実践的な鍛錬をするということが必要ですし、もし人からの推奨を得るのであれば、それに恥じないように鍛え上げて行かなければなりません。速成するためには、人から求められていることに応えるために、地味な一歩一歩の努力を積み重ねると言うことも忘れてはなりません。
このような思想に基づき、人を育てる経営を実践したいという方がいらっしゃいましたら、是非ともお声かけくださいませ。共に理想の実現に向けて取り組んでいきましょう。