『論語』とは、孔子と彼の弟子達の会話を孔子の死後、本人ではなく門人たちが書き付けていた孔子の言葉や問答を、孔子の死後に取り集めて編集したものです。
リーダーの方との会話の中で、従業員の意識や行動についての不満を聴くことが非常に多い。「仕事や学びに対する姿勢が消極的である」、「他者への関心が低く、思いやりがない」、「理屈はならべるが行動しない」等、挙げればきりがないほど、たくさんの言葉で様々に語られる。このような状況に対してどのように対処していけばよいのだろうか。また、どのような人材像が理想的なのだろうか。
【原文】
子曰、知者不惑。仁者不憂。勇者不懼。 子罕第九 28
【読み】
子 曰く、 知者は 惑わず。 仁者は 憂えず。 勇者は 懼れず。
【解釈】
孔子先生がおっしゃった。
「知者は(判断力があるので)迷うことがなく、仁者は(広く、ゆとりのある心があるので)心配することがなく、勇者は(強い心があるので)恐れることがない。」
知者は、常に様々な知識を学んだり、情報を収集したりしているので、判断するのに迷うことがない。仁者は、人に対する優しく広い心を持っているので、人との関係も良く、穏やかな気持ちで過ごせる。勇者は、何も恐れることなく、人として正しいことを実行する。この知・仁・勇の三つを持てたら最高である。
この勇・知・仁を兼ね備えた人こそ、孔子のいう君子であり、現代の言葉で言うと頼もしい優れたリーダーと言える。論語の根底に流れているのは、この素晴らしき君子達の姿であり、孔子は勇・知・仁の様々なバランスを持つ弟子たちに、その個性に応じた指導をしていたといわれる。孔子の学園である孔子世家で学んだ弟子は3000人存在しているが、その内、72人が孔子七十家と言われ、特に突出した才能を持ったものとされている。
【ワンポイント・アドバイス】
私は職場というのは、『君子』を養成する場であることが望ましいと思う。松下幸之助の言葉に次の様なものがある。「松下電器は人を創る会社です。あわせて電気製品を作っています。」 要するに人として正しい、あるいは、すばらしい人格や才能を育む必要があるということである。
仕事の中には、お客様や社会のために精進するという大義がある。それを実現していくためには、利己的な心を戒め、周囲に対する愛情をもって調和できる人材、目標を達成していくために情熱をもって行動することができる人材を育てなければならない。
そのためには、リーダーは経営理念を通して理想の人材を作ることに専心する必要がある。経営者としてその理想を大切な言葉として文書化して伝え、実践することを通して、従業員を素晴らしき君子に育てていくのである。このような理念型経営を実現していきたいと考えている方、是非ともお気軽にご相談ください。